次の日の朝、二人はその場で別れた。
意志の固い由弦を引き留めることができず、一条一人、弦一郎の待つ本家へと帰った。
そして詳細を話すと、弦一郎は胸を痛めた。
「どちらの姓を名乗ろうと、由弦の自由だが、それを私が咎める理由もないが、それではあまりも哀し過ぎるじゃないか由弦。どうして私は息子一人も幸せに出来ないのだろう。それほど愛した女性を私が引き離した。あの子が目を覚ました時に、最初に私が、彼女のことを秘書だと紹介したから。あの時、お前の婚約者だと言っておけば、こんなことにはならなかったはずだ!」
「社長、ご自分を責めないでください。本当のことを言わなかった僕にも責任はあります。それに、あの時の高柳に何を言っても、混乱を起こすと思います」
「どうすればいいだろう」
「一番いいのは自然の流れに任せるしかない、と言いたいところですが、もうそれには遅すぎますし」
「慶太と青木君の婚約を白紙に戻すしかないか」
「そうなれば、慶太さん自身も傷付きます!」
「はぁ~」
弦一郎は頭を抱えるのが癖になってしまった。
二人が話すことろへ慶太がやって来た。
「あ!一条君来てたのか?由弦は?まだ見つからないか!?」
慶太は一条に話しかけた。
その慶太に一条は一礼をした。
「父上、由弦は戻らない気でしょうか。あいつ~!ほんとに心配させやがる!何を考えているんだ!記憶も戻ってないのに」
慶太も心配しているようだった。
そこへ雅羅もやって来た。
「あ!母上」
「由弦さんはまだ見つからないの?」
「えぇ。どこをほっつき歩いているやら。あ!そうだ。母上、やはりウェディングドレスは花嫁と一緒に選んだ方が良いでしょうか?」
浮かれていたのは慶太だけだった。
結婚の準備も着々と行っているようだった。



