漢江のほとりで待ってる


周囲が由弦を心配し、探し回っている間、由弦に辿り着いたのは、親友の一条だった。

「やっと見つけたぞ!高柳。苗字を変えたんだな?そりゃ見つからない訳だ」

そこは、龍の天井画で有名な場所だった。

一人その絵を見上げていた由弦に、一条は声を掛けた。

「いや、小田切、そう言った方がいいのか?」

びっくりしながら、一条を見つめる由弦。

「随分探したぞ!でもなんでここなんだ?」

「……」

「みんな心配してる」

一条の言葉のあと、由弦は静かに話し始めた。

「母さんの生まれた町なんだ。幼い頃、よく母さんにここへ連れて来てもらった。そのすぐ側の池に、夏には蓮の花を咲かせる。オレはそれを見るのが好きだった」

「思い出の場所か」

「母さんとの記憶は、それしかないけど」

「とても大事な記憶だな」

「うん」

「高柳家には、もう戻らないつもりなのか?」

「うん」

「ふ~っ。そうか。でも、青木さんのことはどうするんだ?」

「どうするって、どうもしようがない」

「好きなんだろ?」

「……」

「お前に本当のことを言わなかった責任はオレにもある。だから言うけど、お前と青木さんは~」

「もういいんだ!ホントのことを知ったと所で何も変わらない。オレにとって本当は今だから。それに、二人は結婚する。それが事実だ」

「だから!」

「オレはもう高柳とは一切関係ない!ずっと一人で生きて来たから。これからもそう」

「高柳……」