漢江のほとりで待ってる


「そうね。でも、私が選んだことだし、これも彼のためだから。それに今更……」

「はぁ~っ!?彼のため?高柳専務の気持ちはどうなるんですか?高柳さんの気持ちはどこにあるんですか!一度だって彼の気持ち考えたことありますか!彼のため!?そんなの言い訳に過ぎない!彼の中に自分の記憶がない、その辛さから、その現実から逃げただけなんじゃないですか!それにまだ婚約ですよね!?そんなのいくらでも破棄できませんか?そんな気持ちのままで結婚だなんて、相手にも失礼ですよ!」

仲里の一言は、図星なだけに心が痛かった。

「……そうね。私、最低だわ」

「青木さんて、仕事してる時はとてもクールでカッコイイのに、もしかして、恋愛下手!?もっと押していかないと!}

「もうそんな年齢じゃないわ。それに、彼は年下だし。こんな風になったのも運命。神様がそうなさったと素直に受け入れるしかない」

「神様!?私にはその理解、意味不明です!この世に生み出されたものは、もう誰のものでもない、その人自身、自分自身のものだと思うんです。神様が生み出したのなら、もうそこからは誰であろうと、関わってはいけないと思うんです。運命なんて自分が切り開いていかないと。ただ運命だから仕方がないなんて傍観してたら、ほんとに後悔しますよ?その人自身の意志によって生き方も変わって行くと思いますから。私達は物ではなく、感情を持った人間ですよ?自分が納得して生きないと、それは人生じゃない。人が生きて行くから人生なんですよ?何かにすがるのは、人間誰しも弱いから仕方がないけれど、神様がそうなさった!?って言い方は、私には言い訳にしか聞こえない。一通り努力をして、それでもダメならそうかもしれないけど、青木さんはまだ何もしてないじゃないですか」

「……」

「時に意志は貫かないと。それに、高柳専務がいなくなったってことは、きっと青木さんのこと、好きなんだと思うです。もしかしたら自分の気持ちに混乱を起こしてるかもしれないし。こんなに惹かれ合ってるのに、何で遠回りする必要があるんですか?年齢なんて年を取ってしまえば同じですよ!自分のための人生ですよ?後悔は最小限に生きて行きたいって、私は常に思っています」

「仲里さん、あなた、彼に何となく似てるわ。それに、他人に自分の事を話した事なんてなかったのに、不思議だわ。あなたには話せた。本来、こう言うことを、導かれた、運命っていうのかしら」

「えっ!?」

珉珠は仲里に微笑んだ。

「何か、偉そうなこと言ってすみません」

「いいえ、お陰で目が覚めた感じだわ。いい訳、ほんとにそうかもしれない。誰かのための最善策なんてないのに。この年で恥ずかしながら、年下のあなたから学ぶなんて。でも仲里さん、ありがとう」

この時、和やかな雰囲気に包まれた。