漢江のほとりで待ってる


珉珠が来るのをあれから待ち続けた由弦。

いくら待っても来てくれることはなかった。

その病室で由弦は、信じ難い事実を知ることになる。

見ていたテレビから、

「高柳グループ御曹司、慶太氏、苦難を乗り越え婚約へ!!純愛を貫く!あの噂の彼女、秘書であり、良家のお嬢様とゴールイン!長きに渡っての確執に終止符か!?弟、由弦氏の心境は!?」

その文字が由弦の目に飛び込んで来た。

テレビではどこも大々的に報道していた。

由弦は全身の力が抜け落ちる思いがした。

婚約!ゴールイン!の文字が何度も頭に流れて行く。

「嘘だ!冗談だろ!?何かの間違いだ!これは夢だ!そんなはずはない!」

なぜか、胸に言い聞かせて、現実逃避しようとする自分がいた。

体が強張り、背中から心臓まで、チクチクと針で刺されているような感覚に陥る。

—————— 兄貴と青木さんは好き合ってたんだから、当たり前の結果じゃないか!でも何でか、信じたくない!婚約を阻止したい!でも今の自分には何もできない!けど、誰かのものになってほしくない!何とかしないと!

気持ちが混乱していた。

居ても立っても居られない気持ちだった。

由弦の表情が変わって行くのを美桜は見ていた。

かけられる言葉がなく、また何をどう言えばいいか分からなかった。

自分の願った結果になったはずなのに、美桜は少し怖くなった。

目の前で変わって行く由弦を、どうしていいか分からなかった。

これを境に、由弦から、笑顔が消え、口数も少なくなって行った。