漢江のほとりで待ってる


「ユヅ!リハビリの時間だよ!」

美桜は二人の会話が気になって仕方がなかった。

もしも由弦が何か一つでも思い出したら、そう思ったら、居ても立っても居られなくなって、慶太の気遣いも余所に、美桜は中へ入って来た。

「もうそんな時間か~。分かった」

由弦は残念そうに答えた。

「じゃぁ、行くわね?無理しないで?由弦」

「うん。また来てくれる?」

「えぇ、もちろんよ」

「うん!待ってる!」

由弦は淋しいのを我慢して笑って答えた。

帰って行く珉珠の後ろ姿を見送った。

この日のリハビリは身が入らなかった。

やっと会えたのに、会えて嬉しかったのに、見送ったあとは、まるで失恋でもしたような、切ない気持ちになった。

ずっと傍にいたい、触れていたい、彼女が、とても恋しかった。

由弦は珉珠に対してそんな気持ちを抱いていた。

溜息ばかり吐く由弦に、

「どうしたの?ユヅ。疲れた?何だか心ここに在らずな感じだよ」

由弦を見ていて、珉珠のせいと美桜は分かっていた。

「ううん。なんでもない」

それきっり何も言わず、ただ由弦は足を動かしていた。

―――― 彼の中に自分はいない……

すでに別れていたとは言え、今になって由弦の大切さが分かる。我がままだった学生の頃、自分を好きでいてくれた、彼の愛の深さも身に沁みて来る。

今になって……なぜ今なんだろう。今じゃないと分からなかったんだろう。

もう一度自分を愛してほしい。彼のために生まれ変わりたい。

どうしても手放したくはないとそう思った。

そして美桜はある決意する。