漢江のほとりで待ってる


由弦の病室へ行くとすぐ、

「元気にしていたか?由弦」

弦一郎と慶太は声を掛けた。

「あ!父さん!兄貴!来てくれたんだ?もう退院出来そうだよ!」

以前の元気な由弦に戻っていたようだった。

珉珠は、扉が開いてすぐ由弦を見つけ、姿を確認して変らず元気そうだったと分かると、安心した。

相変わらず、美桜は由弦に付き添っていた。

その姿をあまり見たくないのか、珉珠は弦一郎と慶太の二人の後ろで、待機していた。

由弦は二人の後ろに立っている珉珠を見つけ、

「あ~っ!青木さん!!来てくれてたんだ!」

さらに由弦の顔が明るくなった。

慶太は、珉珠を由弦の傍に行かせた。

「青木さん、元気にしてた?ちゃんとご飯食べてる?」

由弦に心配された珉珠は、クスッと笑った。

「入院してるあなたに心配されるなんて。えぇ、ちゃんと食べてるし元気よ?」

優しく答えた。

「最近来てくれなくなったから、淋しかったよ。ま、学生のオレと違って働いてるし忙しいのが当たり前か。今まで付き添ってくれてたことが異例なことだったんだよね」

そう言うと由弦は珉珠の手を握った。

「由弦?」

手を握られてびっくりして、思わず珉珠が名前を呼んだ。

「久しぶりに聞けた!青木さんからそう呼ばれると、なんかドキドキするんだ。心地良い響き」

由弦は珉珠の顔を真っ直ぐ見て言った。

思わず珉珠は由弦の頬に触れた。

その手に甘えるように由弦は頬を乗せた。

美桜は二人のやり取りを見てショックを受ける。

慶太は美桜の気持ちを察してか肩をポンポンと軽く叩いた。

そしてそこにいるみんなを外へ誘導した。