漢江のほとりで待ってる


本社に戻ると、社長である弦一郎にとても歓迎された。

弦一郎は珉珠に、由弦のことにも深く感謝した。

それから、現在の記憶のない由弦に、本当のことを言わず、付き添わせたこと、そのことも深く詫びた。

本来なら幸せに過ごせていたはずの二人に、惨い仕打ちをしたこと、美桜が現れたことで、よけい珉珠の立場を辛いものにさせたと、深々と頭を下げた。

そして、弦一郎自身、由弦の記憶が戻り、二人の関係も必ず元に戻ることを信じているとも伝えた。

「だから変わらず、あの子の傍にいてやってほしい」

珉珠に父としてお願いした。

珉珠はそっと頭を下げた。

珉珠はその言葉を聞いて、苦しさが少し軽くなったような気がした。

それからは今まで以上に、テキパキと仕事をこなし、冷徹女が復活した。

時には慶太の営業にもついて行き、息つく暇もないほど珉珠は仕事に励んだ。

でも、一たび仕事から離れると、淋しそうな顔をする珉珠だった。

「はぁ~……」思い直して、また仕事をし出す彼女を見て、慶太もまた辛かった。

きっと由弦のことを思い出しているのだろうと、察しが付いたから。

人前ではキリっとしていて、何事もないようにしているが、慶太にはそれが返って痛々しく見えた。

「由弦!早く戻って来い!彼女はお前でないと本物の笑顔に出来ない!見ているこっちが辛い」

慶太はそう思いながら、珉珠を支えた。

珉珠が仕事に従事すれば、その分、由弦から遠のいて行った。

病室へ足を運ぶことも、今以上に少なくなって行った。

慶太はそのことも気になり、暇を見つけて、社長と珉珠を連れて、由弦の見舞いに訪れることにした。