漢江のほとりで待ってる


「悪いことは言わない、もう止めろ!記憶が戻った時に取り返しのつかないことになったら、お前責任取れんのか?好き合ってる者同士の間には、どうやても入り込めない!入る余地はない!愛と執着を勘違いしてはいけない」

「してない!」

「してる!ある人が言ってた、「愛と勘違いして、周りが見えなくて、望むばかりなのは恋。本気で誰かを愛した時、人は一歩引くことを覚える。愛の条件は、愛した相手が一番幸せじゃなきゃダメだから……」って。恋は自分に一生懸命で自分が大好きで、自分が幸せなら相手もそうだと思い込む。でも一生懸命な分、輝いてる。愛は思いやりが生まれる。先に相手のことを考えるようになる。守りたいって気持ちが生まれる!でも、神崎のは、恋も愛もどちらも当てはまらない。今のお前は輝いてもいない。自分のことしか考えてない、諦めの悪いただの執着だ」

「……っく」泣き出す美桜。

そして、

「元旦那さんにも同じこと言われた。自分のことしか言わないって。相手の気持ち考えてないって。だから、どんな我がまましようと、何しようと、笑って受け止めてくれたユヅを思い出したの。無性に彼に会いたくなった。いつも明るいきみが好きだって、クヨクヨ悩まないとこ、夏の青空のような爽やかなきみが好きだって」

黙って聞く一条。

「でももうそれは、学生の頃の話。分かってる!分かってるけど、でもどうしても諦めきれない」

声を震わせながら、美桜は泣き崩れた。

一条は溜息を吐いて、呆れた。

由弦の中で止まってしまっている時間は、容赦なく過ぎて行く。

それを利用し留まろうとする者と、流れに沿って進もうとする者がいた。