「付き添いを止めることをしたくない」
とは言ったものの、やはり美桜からの、
「今のユヅにとって、彼女は私」
その直接的な言葉は、深く胸をえぐられた思いだった。
―――― やはり付き添うべきではない……今の自分は彼にとってただの秘書。
そう思うと、気持ちが暗くなり、病院にいる時間も短くなって行った。
でも由弦の体調は気になる。それ以上に美桜に気兼ねする。
病院へ向かっていざ病室の前に立つと、扉を開く手が躊躇う。
こんな日を何日も繰り返し、たまに二人がリハビリから帰って来る姿を遠くで見つけると、やましいことなんて何一つないのに、思わず身を潜めてしまう。
その仲睦まじい姿を見ると辛くなる。
「何してるんだろう、私……」胸の中で思う珉珠。
由弦の姿を確認したら帰る、自分で溝を作って行ってしまった。
そんな珉珠の気持ちなんて知らない由弦は、
「最近青木さん来なくなったな」と思わず呟いた。
「忙しいんじゃない?自分の彼氏じゃない限り、そんなびったり毎日いられないって。それに私もいるから安心してるんじゃないかな」
—————— 意外と彼女、物分かり良いんだ!ううん、口ほどにもなかったみたい!
美桜は少し、勝ったような気になっていた。
「そっかな。でも、事故に遭ってからずっと彼女が付き添ってくれてた。記憶が戻らない間もずっと。看護師さんに聞いたんだ、彼女かと思ってたって」
「そ、それは、お兄さんに頼まれたのもあったからじゃない?義務感!?」
「そうなのかな。オレが事故に遭ってから記憶が戻るまでの間、美桜は何をやってたの?彼女なのに、最初入って来た時、まるで他人事のようだった。それに引き換え、青木さんは自分のことのようにオレを心配してくれて、家族みたいに寄り添ってくれた」
「……」何も言えない美桜。



