翌日、由弦は少し早めに本家へ出向いた。
すると何やら話し声が聞こえて来た。
「例の件は今日辺り、大々的に発表されるわ。もう後には引けないの!三六年も苦しん出来たのよ?あと少し、あと少しで慶太は……」
「奥様……」
「その呼び方は止めて!せめて二人きりの時くらいは名前で呼んで!私はあの日からあなたのことを一度だって裏切ったことはないのよ!慶太は紛れもなくあなたの子なんだから。ずっとずっとあなたのことを……」
「分かってるよ、分かってるよアラ。君も慶太も私が必ず守るから!今度はあの時のように手放したりしない!」
「堂々とあなたのことを、父と呼ばせてあげたいの!」雅羅は泣いた。
椎名は雅羅を抱き締めた。
二人の話を偶然聞いてしまった由弦。
慶太と自分が本当の兄弟でないことを知り、ショックを受け、その場からそっと立ち去った。
―――― どういうことだよ!嘘だろ!?何かの間違いだよな?聞き間違いだよな?オレと兄貴が全く血の繋がりがない!?義母様と椎名おじさんが?一体どういうことだよ!
ガタン……
二人の話す部屋の外側から、何やら物音がして、椎名は雅羅に静かにするよう合図した。
そっと部屋の外を覗いて見ると誰もいない。慌てて屋敷内を探してみたが、物音の特定は出来なかった。
由弦は本家から逃れたあと、街で信号待ちをする中、見上げた大きな電光掲示板の速報ニュースで、二人の結婚が本当だと知らされる。
「高柳グループ御曹司ついに結婚!!予てから交際していた秘書と!!」
そして、売り出されている新聞や雑誌には、珉珠の生い立ちや、彼女の父が政府関係の仕事に就いていたことなども暴露され、
「良家のお嬢様」
と大きく見出しに書かれていた。
雅羅の例の件だった。



