数日経ったある日、由弦はクリストファーの滞在するホテルを訪ねた。
どうしても、彼のことが放っておけなかった。彼が立ち直れなくなる前に、何とかこの状況から、彼自身の力で抜け出せるように力になりたかった。
部屋に通され、見るとクリストファーの顔色は良くなかった。
よほど苦しんでるのだと思われた。
「今胸を張って堂々と生きてますか?自信を持ってアーティストだとあなたは言えますか?」
由弦は静かに言った。
「何だ急に」とクリストファー。
「あなたを救いたい」
「何のことだ!」
「言わなくてもご存じなのでは?神の前で堂々と祈りを捧げられますか?」
「……!!」
「実は、僕の部屋には隠しカメラが設置してありました。もちろん僕自身がその性能を知るために取り付けました。そしたらあの日偶然、誰かが僕の部屋から、企画書とデザイン画を盗んで行った姿が映っていました。なぜだか、その盗まれたデザイン画は、今回あなたが発表した絵とそっくりだったんです。そして企画も!」
「言い掛かりだ!そんなもの証拠にならない!第一私が盗んだわけじゃない!」
「盗んだものじゃない、白を切り通せ!そう言って手渡されたのでは?」
「知らない!」
「きっとスランプだったあなたは、今回の依頼が復帰のチャンスだったんでしょう。藁をもつかむ思いで、悪いことと知りながらその話に乗ってしまった。きっと描いても描いても、思うように行かず、嘘におびえながら今も罪悪感と闘っているのでは?」
「だまれ!!」
「いえ!止めません!絵画展も大成功したそうですね?でもそのあとが続かない!描けるわけがない!そんなの当然!本人が一番よく分かっていることですもんね!だってスランプを乗り越えてないんだから!その度に、僕の絵を盗み続けるんですか!それともまた画風を変えてなんて言い訳して、誰かの絵を盗むんですか!あるいは新しいゴーストでも見つけますか!」
「だまれ!!だまれ!!だまれ!!」
「人の才能で有名になっても長続きはしない。神は真実を知っている、その言葉そのまま、あなたにお返し致します。今ならまだやり直せます!全てを失うんじゃない、自分を取り戻すんです!クリストファー。それとこれはあなたがどうするか決めてください」
由弦は、部屋からデザイン画と企画書が盗まれた証拠が映っているUSBメモリーを置いて行った。
苦しむクリストファー。そのまま床に崩れ落ちた。



