漢江のほとりで待ってる



慶太が日本へ戻ったあと、

「毎年、五月になると、誰かがお父さんのお墓に綺麗な花を添えてくれているの」

珉珠の母親が言う。

「そうなんだ。お父さんの命日を知ってる人なのね」

「そうね。おそらく。あのねミンジュ…… 本当はね?寄付してくださる方、高柳副社長じゃないのよ」

「うん。分かってた。紙袋見た時になんとなく理解できたかも」

「!!そうだったの?ごめんね。あなたを巻き込んだりして」

「お母さん……そんなこと言わないで?」

「花を添えてくれる人も、寄付をして下さる方も、分からないことだらけなのに、どうしてこんな風になってしまったのかしら」

珉珠の母親は落胆した。

「ミンジュ、大丈夫なの?」

「大丈夫よ?何とかするから。寄付をして下さってる方が副社長でないことは分かってたことだから。あの紙袋も突き返せばよかったのに」

「私だけのことなら、突き返せたけど、あなたのことまで言い出すから、あなたには迷惑かけられないと思って。母さんのせいであなたが仕事を辞めさせられたらって思ったら」

「お母さん、そんなものこっちからお断りよ?従うくらいなら、喜んで辞めるわ!お金で人の気持ちは買えても、人の心を本当の自由になんてできないんだから。だからお母さんは今まで通りにしてて?」

「ミンジュ、ありがとう。あ!あなた、さっき専務がどうとか言ってなかった?もしかして、その専務って方にあなた~」

「……えぇ。実は、その専務、高柳由弦さんって言うんだけど、私、彼を愛してる」

「高柳!?」

母親が聞き返したあと、珉珠は慶太と由弦の関係や、彼が年下であること、今どういう状況にあるか、その経緯を話した。

「そうだったのね。それなら、あなたが誰よりも傍にいてあげないと。一番辛い時に必要とし合ってる者同士が一緒にいないと。この国はまだ視野が狭くて、世間体だの、体裁だのと気にするけど、母さんはあなたが幸せならそれでいいと思ってるの。どんなことがあっても、母さんはあなたの味方よ?あなたは私が守ってあげる!だから日本に戻りなさい。母さんは大丈夫だから」

「お母さん……分かった。ありがとう。必ず、彼を連れて帰って来るから」

母は笑ってうなずいた。

その顔を見て、珉珠はある言葉を思い出した。

「我が子が幸せなら、それが一番だと思われるはずだ」由弦の言葉。

―――― あなたは淋しい生い立ちでありながらも、そのことをすでに悟っていた。親は子に惜しみなく愛情を注ぐ。私が受けた愛情を、今度は由弦あなたに、私が惜しみなく愛情を注いであげる。

珉珠は胸が熱くなるのが分かった。

どんなことがあっても、彼の傍を離れない!誰が邪魔しようと、どんな障害だろうと乗り越えようと誓った。

そして日本へ戻り、慶太とのことをはっきりさせるため、副社長に会うことを決意した。

すると慶太の方も、なぜが話し合うだけなのに、場所をわざわざ都心の離れた所に指定して来た。