「それと、義母様に結婚のお許しを頂きに参りました」
「……!!そのことですが、副社長!母を巻き込むのは止めて頂けませんか!母には関係ありませんから!」
そう言うと珉珠は菓子袋を慶太に突き返した。
「ミ、ミンジュ!」と母。
「青木君、一体どうしたんだ?頭の良い君ならもう状況は把握できているだろ?君の大切な母上の事務所が無くなってもいいのか?由弦も」
「副社長!それでもこれは受け取れません!」
「君さえ条件を飲めば全て丸く収まるのに。いや?もうそんな条件など気にならないはずだ。私が寄付をしていた人物で、君の望んだ通りの結果になった。君は私に好意を持っていたのではないのか?ボランティア精神に溢れ、仕事が出来、頼り甲斐のある男!その男が君の目の前にいる。何を悩むことがある?ふぅ~、それでもあえて言おう。母上の事務所、由弦共々潰すか、この条件を飲むか二つに一つだ」
「副社長は、何か勘違いをされています。私は、副社長を一時は尊敬したことはございましたが、一度も副社長に好意など持ったことはございません。それに私が従っても、専務の信頼回復はして頂いていません。約束すら守ってもらっていないのに、副社長は多くを望み過ぎではありませんか?」
「今立場的に優位なのはどちらかね?ビジネスにおいても、優位に立つものが常に実権を握る!それと、君こそ勘違いをしてはいけない。私はただ従わせるのではない。私は君を愛している。だからもう素直に私のものになれ!」
―――― 女はこの言葉に弱いのだろ?ほしいんだろ?強引な言葉が!まして高柳グループの後継者である私が直々に言っているんだぞ!
慶太内心そう思った。
「……はぁ。時間をください。私もただ大切な人を守りたいだけなんです」
珉珠は冷静になりたかった。
「いいだろう。ではこれは持ち帰ることにしよう」
慶太は紙袋を受け取った。
会話が終わったあと、慶太は珉珠の母親が座るデスクの隅の写真立てに目をやった。
そこには椎名が言っていた通り、少年の頃の由弦が写っていた。
「あの写真は?」と慶太。
「あぁ、あれはボランティアに来てくれていた人たちです」答える母。
「あの少年は?」
「!?あ~あの子は、三ヶ月ほどうちで住み込みながら、ボランティア活動にも精力的にやってくれてた子です」
「ほう。で、あの子の現在の所在をご存じで?」
「いえ、全く。ある日突然、大きな車が迎えに来て、その子を連れて行ってしまったので」
「……」
慶太は顎に手を当てながら思った。
由弦を連れて行ったのが、父、弦一郎の仕業と分かった。



