彼らの思惑など知らず、自分なりに考えを巡らせる珉珠の所に、
「しばらくは君も気持ちの整理がつかないだろうから、休暇を取るといい」と慶太からの電話。
「専務の件はどうなりましたか?」
「今それどころじゃない。会社全体が大変な時だ。それを鎮めるのが先決だ」
「それはご自分が引き起こした問題だからですか!」
「何を言ってるんだ!とにかく君は一度母上の元に帰って心身共にリフレッシュしてくるといい。これは命令だ!」
「……!」
強引な慶太の言葉に仕方なく従い、珉珠は次の日、母親の元へ帰ることにした。
こんな時にリフレッシュなど出来る訳もなかった。
けれど返ってそれは好都合だった。
雅羅が母に何をしたか気になっていたのも事実。
とりあえず、母親のいる事務所に顔を出した。なぜか母親の様子がおかしい。
突然帰った娘に理由も聞かず、
「おかえり。ねぇ、ミンジュ、副社長のことはどう思っているの?」
と母親の第一声に、やはり明らかにおかしいと珉珠は感じ取った。
母親には予め、珉珠がどういう理由で帰省するか知らされていたから、雅羅の思惑に従った。
「急に何を言い出すの?」
視線を外すと部屋の隅には、日本の銘菓の紙袋が置かれてあった。
それを見て珉珠は、会社の人間がここに来たことが分かった。
「……実はね?実は……あの方、十年間寄付をして下さっていたパク・ジュウォンさんだけど、その方、実は高柳慶太さんなの」
「えっ!?ふ、副社長が!?」
「そ、そうなのよ。あなた、ずっとその方のそばで秘書をしていたでしょ?」
「そうなんですよ、お義母様。彼女は素晴らしい部下です。今後は良きパートナーに」
と突然二人の前に現れた慶太。
母、雅羅のお陰で、韓国語は流暢だった。
突然のことに驚く珉珠。
慶太は、珉珠に電話をしたあとすぐに、自分も彼女のあとを追っていた。
「あ、あら、副社長様、いらしていたの?あなた様にはほんとに感謝もしきれないほどです。ご挨拶が遅くなり本当に申し訳ありませんでした」
慶太が来ると分かっていながらも、苦し紛れに珉珠の母親は言った。
「いえいえ、とんでもございません。それに副社長様だなんて、義母上になる方にそんなよそよそしい呼び方は淋しいですよ」
「副社長どうしてここに!?」
「いや、迷ったんだが、やはり、こう言うことは早い方がいいと思って、ご挨拶に伺わせてもらったんだ」
「ご挨拶!?それに、副社長、ご自分ではないとはっきりおっしゃられたじゃないですか。慈善事業はやらないと」
「そんなこと堂々と言う方がおかしいだろ?けど、今回のように分かってしまってはもう隠せないから」
今、そんなことを言われても、例え寄付していたのが本当に慶太であったとしても、珉珠には信じられなかった。
違和感しかなかった。



