漢江のほとりで待ってる



「だから魔が差したんだろ?神と悪魔は紙一重だと思う。神は自分の傍に綺麗なものだけを置きたがる。汚いものだけを、俗世間に捨てた。それは神の罪だ。そのため色んな感情に翻弄される人間は、そこそこ満たされてる時って、気持ちに余裕があるから、間違った選択をせず、いい人でいられる。けど、何か一つ欠けるとたちまち人間は、心が荒んで行く。人は悪魔を忌み嫌うけど、いつもオレ達の中に潜んでる。辛い、淋しい、ひもじい、妬み、そんなものがいっぱい集まって、邪心に変わる。悪魔こそ一番人間らしくて、素直で寂しがり屋な存在なのに。満たしてやるのにかなりの時間と忍耐力が必要。きっと今のクリストファーがそうなんだ」

「何だか難しい話だな。神か……それに、こんな時に他人の心配か?お前らしいっちゃらしいけど、だからって今回の場合は許されることじゃない!色んな人間の手で捻じ曲げられてる!お前がやらないならオレがやる!真実は明らかにすべきだ!クリストファーが苦しんでるなら、止めてやらないと」

「うん。でも綺麗事は言えない。オレもそうなり兼ねない」

「高柳……みんなそうだろ。だから何かに誰かにすがって、懸命に真っ直ぐ生きようとする。それが人間だ。やり返すのではなく、彼のために手を差し伸べるんだ。それと、もしなんだったら、うちに戻って来てもいいんだぞ?上海の件はお前に一任してるから、何だったら、一生契約してやるぜ!」

「一生契約って、なんだよ」由弦が笑った。

それを聞いて一条は、

「とにかく気持ちだけは強く持っていろ!潔白は明らかなんだから。時は必ずお前に好転して行く!」

「ありがとう、一条」

「あぁ。何かあったら、何でもいいから言ってくれ!力になるから!」

「うん。あ、あのさ?」

「ん?何だ?」

「いや、何でもない」

由弦は何か言いかけてやめた。

一条は、最後の由弦の声を聞いて電話を切ったあと、慶太に関する疑念を明らかにするため、動き出した。