…長かった。
ようやくモブから一歩前進した。
…もっとも、寺めぐり仲間に
過ぎないが。ようやく彼女に
村人その1として認識された。
彼女の様なタイプは
間を空けると数日で
我に返るので、鉄は熱い内に…と
彼女の所属する部署へ向かう。
そこには、狸ジジ…いや、
かつての上司が、定年後の
再雇用で配属されているのだが、
恐るべきコミュスキルで、
この短期間のうちに、
彼女の昼飯友達に収まった。
早い話、俺と彼女が
同じ寺で出会い続けたのは
あの狸のオススメの寺へ
足を運んだからだ。
…ちなみに神社仏閣は
建築物として好きな程度で
それほど思い入れは
なかったりする…
狸には、ネタ提供の代償に
全く興味のかけらもない
ゴルフに付き合わさ続けたが
ホント、付き合っておいて
よかったとしみじみと思う。
さらに言えば、営業部は
俺が、彼女が入社してから
密かに片思いしている事を、
皆知っており、狸を筆頭に
先輩達から、俺の
ヘタレっぷりは、相当
呆れられていた。


