シェヘラザード、静かにお休み


雨で氾濫した後だったのか、少し濁ってはいたが気にせずに顔を洗った。

城の方向から煙は見えない。全て鎮火したのだろう。

裸足では舗装されていない道は歩きにくい。シーラは来た道を戻って、その車にたどり着く。

トランクに腰かけてショートブレッドを口にするルイスが居た。

「……まさか戻ってくるとは」

「私もお腹空いた」

昨日と同じ箱が差し出される。シーラは受け取ってひとつを口に咥えた。

ルイスの隣に座り、裸足を浮かせた。

「戻ってこないって選択肢がある?」

尋ねて、目を細めて微笑む。