シェヘラザード、静かにお休み


それから数時間。
裸足をぶらぶらさせてシーラは音楽を聴いていると、フロントガラスに雨粒が当たった。

日が完全に落ちた。暗くなった空から、塩っぱくない雫が落ちてくる。

ワイパーが動き始め、シーラがそれを目で追った。

「……無理だ」

ルイスがワイパーを止める。止めざるを得ないくらいの土砂降りだった。
エンジンも切ってハンドルに腕を乗せる。

「無理って?」

「眠い」

ルイスはシートベルトを外して、運転席を後ろへ倒した。
シーラはその肩を掴み、揺らす。

「ちょっと、ルイス、運転は?」