シェヘラザード、静かにお休み


ラジオのチャンネルを弄り、四六時中音楽が流れている局に回す。

「この曲知ってる?」

「最近流行ってるロックバンドだ」

へえ、とてきとうな返事をしてシーラは身体を小さく揺らした。ノッている、のだろうか。

「ねえずっと思ってたんだけど、どこに向かってるの?」

「家」

「ルイスの?」

「ああ。別宅だけど」

市内のアパートに戻っても安全とは言えない。今やどこが安全かもルイスとシーラには分からないが。

別宅、とシーラは復唱した。
流石ボンボン、というのは心の中で。