シェヘラザード、静かにお休み


命からがら城からあの街へ逃げて来た頃、アメリアとイーサンは、熟年夫婦のように会話が少なかった。

アメリアは憔悴していたし、イーサンも神経を尖らせていた。

二人は、ルイスとシーラに見つかって、幸福だったのかもしれない。

「今に見てなさい」

首元のネックレスに触れながら、アメリアがそう言って笑った。





夕方になり、雨と風が止んだ。今朝の荒れた表情はどこへやら、雲の切れ間から綺麗な夕陽を覗かせている。

「シーラ、行こう。時間がない」

部屋で読書に耽っていたシーラを呼んだのはルイスだった。