シェヘラザード、静かにお休み


こんなうら若き女性に、約束事を取り付けるだなんて。

「いいえ」

「そうかしら」

「女王になったらその権限で反故にしてしまえば良いのでは?」

自分だったらそうする、とイーサンは口にした。

「……そんなことしたら、きっと嫌われちゃうわ」

作った笑みを見せ、アメリアはイーサンから視線を外す。

嫌われるのが怖いのではない。
約束ひとつ守れない自分が、嫌なのだ。

「イーサン、ここまでついて来てくれてありがとう」

ふと零れた言葉に、イーサンは首を振る。

「その言葉は、女王陛下から聞きたいものですね」

言うようになったものだ。