シェヘラザード、静かにお休み


言いたいことがあるのだろう、とシーラもルイスの方を見たが、口は開かない。

「どうしたの?」

「自然が好きなのか?」

「好きだけれど。ルイスだって好きでしょう?」

「嫌いなことはないな」

「ローウェルは狼が守ってくれているのよ」

きゅっと青い瞳が細められた。そして、漸くルイスは気付いた。

シーラは笑おうと、努めているのだ。

「昔、祖父に聞いたことがある。森の奥に狼の守り神がいると」

「ええ。貴方が自宅へ帰ったとき、別荘から遠吠えが聞こえたわ」

尤も、それは神様の狼ではなく、本物の狼が仲間を呼ぶ声だったが。