シェヘラザード、静かにお休み


ぐっと泣きたいのを堪える。

自分だってルイスの何を知っているというのだろう。生い立ちを知ったからといって、全てを知った気になっているだけだ。

豊かさの中にもきっと厳しさや辛いことだってあったはずだ。それを全て否定するのは、間違っている。

ただシーラは、生まれより貧しさより、ここまで来たことを否定されたような言葉に、悲しさを覚えた。

ガチャ、と静かな音をたてて部屋の扉が開く。

ルイスがゆっくりとシーラの埋まるソファーへと近付いた。

「シーラ」

「疲れてるから、もう眠るわ」

「寝ながらで良いから、聞いてくれ」