シェヘラザード、静かにお休み


その様子は、帰りが遅いと叱る父親とテキトウに答える娘のようだと、イーサンは見て思った。
少し面白い。

「シーラさん、ではお先に」

意味深長な笑みを浮かべ、イーサンは去って行く。

今まで敬称をつけて呼んだことなんて無かったのに。
シーラはその背中を見て一人眉を顰めた。

その横で、恐ろしく冷めた顔をするルイスがいるのも知らずに。

「何なのかしら、ねえルイ……」

いや、今見てしまった。

まだ怒っているのか。
そんなに怒らなくても良いだろう。

シーラの中で二つの感情が沸いて混ざる。