シェヘラザード、静かにお休み


こん、と窓に帽子のツバをくっつけた。シーラは呟く。

「ミステリー小説では、嵐の夜に泊まった屋敷で殺人事件が起こると聞いたわ」

「……縁起の悪いことを言うな」

「口が滑ったわ、ごめんなさい」

ルイスが窘め、シーラは肩を竦めた。






車を停めて四人で屋敷へ入った。

「エミリーは?」

「ちょうど俺の実家の方へ行ってもらってるんだ。母の体調が近頃悪くてね」

そうか、と答えながら階段の手すりの埃を指で払う。