シェヘラザード、静かにお休み


荷物から帽子を取り出したシーラはそれを目深に被り、黙ってそれを聞いていた。

雨に濡れたアメリアはタオルで顔を拭った後、フードを被る。

「エミリーってもしかして」

「マリアさんの娘」

なるほど、とシーラが納得した。だからルイスの別荘にエミリーの幼い頃の洋服があったのだ。
そしてそれをシーラは着せられた、と。

「……信用がおける人間なんですか」

イーサンの質問は尤もだった。

「ええ、危害を加える理由がありません。年上ですけど、マイケルも幼馴染です」

「それは良かったです」

窓の外は雨が酷くなった。風が木々を揺らす。