シェヘラザード、静かにお休み





ぽつりとフロントガラスを水滴が叩いた。

「降ってきた」

ルイスの呟きに、うとうとしていたシーラがルイスの方を見る。

ラジオでは天気予報が流れていた。外に出ているアメリアとイーサンはまだ帰ってこない。

「嵐か……」

「あれ、お屋敷よね」

シーラはルイスの方へと身を乗り出す。さらりと肩からブラウンの髪が落ちた。
少し身を引きながら、ルイスも窓を開けてその向こうを見つめる。

確かに、灯りがある。

その時、どこからかクラクションが鳴らされた。シーラの肩がびくつき、同時に窓枠から手が滑った。