シェヘラザード、静かにお休み


がたがたと車体が揺れる。アメリアは出来るだけ窓の向こう、遠くを見ようと努めた。

「すみません、少し車を停めてください」

すぐにイーサンが気付き、ルイスに声をかける。
こういう時ばかりとても気が利くのだ。

ルイスは車を停めた。

「嘘でしょう? 動いて2時間も経ってないわよ」

振り向かずにシーラはローヒールの靴を脱ぎ、シートの上で膝を抱く。

ごめんなさい、と申し訳なさそうにアメリアが言った。

「何か言ったか?」

「いーえ、王女様、ごゆるりとお休みください」

どうぞどうぞ、と窓の外へと全ての指を向けた。