シーラは自分の口からそうした言葉が落ち着いて出てきたことに驚いていた。
「ここまで来るのに、多くの人が亡くなった」
争い、貧富の差、先の革命。
「甘い考えの私だけが、生き残ってしまった……」
肩が落ちるという表現を、シーラは初めて目の前にした。静かに涙を流すアメリアを慰める気持ちにはどうしてもなれなかった。
シーラも、多くを奪われた側だからだ。
「生きているなら、きちんと使命を全うすべきだと思うわ」
王族として生きるとしても、一人の女として生きるのだとしても。
扉の方を向いて、シーラは黙った。近づく足音は二人分。



