シェヘラザード、静かにお休み


二人の女が顔を合わせて、それからルイスの部屋へ入った。

定位置へ座り、沈黙が降る。アメリアはシーラの方を見るが、持ってきた本を読み耽り始めていた。

「何の本ですか?」

「物語」

「どんな?」

「勇者がお姫様を助けて、最後は二人が結ばれるお話よ」

シーラが顔を上げた。青い瞳に見覚えがある。
あの宝石だ、ベニトアイト。

昔、アメリアの母親が持っていたネックレスに、その貴重な石がついていた。

母親のことを思い出して、視界が滲んだ。アメリアが急に暗い顔をしたので、シーラは眉を寄せる。