寝泊まりしている部屋の前で野良猫がこちらを見下ろしてしている。
薄緑色にその瞳が光っていた。
「ねえ、彼女に体術教えたのって貴方よね?」
話題が変わり、シーラがイーサンの方を覗き込むようにして聞く。
「私にも教えて欲しいのだけれど」
「……何故?」
「これから使えるかもしれないじゃない。王女様を守ることにも」
「あの男に教われば良いだろう」
ルイスは教えてくれない、とシーラは思う。
働くことにすら、最初は難色を示していたのだ。
イーサンは承知して、シーラは階段を上っていく。
猫がシーラを見上げて、一声鳴いた。



