シェヘラザード、静かにお休み


年頃の女性が一人で出歩いて良い時間ではない。それは、この場所がどれだけ"平和"でもだ。

「……あんたこそ、あの男を連れ歩いていなくて良いのか?」

話し方が昼と違った。シーラはそのことに顔を上げたが、気にしてはいない。

シーラは貴族でも金持ちでもない。敬語を遣われる義理も、警護をつける意味もない。

「ルイスは相棒なのよ、一緒にいたい時だけ一緒なの」

尤も、それはシーラの都合ではあるが。
ルイスが聞いたらそう言うに違いない。

「それは良い関係だな。シーラ・ガードナー」

金を払い終えて、イーサンはシーラの方を向いた。