シェヘラザード、静かにお休み


王女は戸惑った。

どうして、ここにいるのか。理由。存在意義。ずっとここまで逃げてきた。城で何が起こっているのか、耳に入れたくなくて。ずっと逃げて。

「どうしてって……」

「そっちの方へ聞いてるの」

すっとイーサンの方を指さしたシーラ。

「あなたはどうしてここにいるの? その理由と、私は同じよ」

アメリアはイーサンを見た。数秒目が合う。ルイスはそれを眺めていた。同じく、シーラも。

ふっとアメリアはふっと微笑んだ。
まるで聖母だ。

「それなら、よくわかるかもしれない」

自分のことは何ひとつ分からないのに。