まだ一歩も踏み出せてない内に、ゼロに戻ってしまう。

「城の近くで勤めていたんですけど、あんなことが起きて。何かあったら危ないので親戚を頼ってこっちまで来たんです」

「そうだったか……。大変だったな、被害はなかったのか?」

「同僚が、どうなったのか」

口に出して、ジャックのことを思い出した。牢屋番を辞めるのを最後まで引き留めてくれた彼のことを。

忘れたわけではない。ただ、思い出すときりがないので、考えないようにしていた。

「革命家たちは遺体はきちんと葬ると言っていたが、その中に居ないことを祈ろう」

「ええ、ありがとうございます」