シェヘラザード、静かにお休み


分かってます、といつものように返事をする。

「本当に、気を付けてくださいね。どうかご無事で」

城の牢屋番として働きに出ると言ったときですら、そんな言葉はかけなかった。

ルイスはその言葉に籠った意味を察して、振り向く。

「大丈夫です。私がきちんと守ります」

自分の少ない荷物を持って、ルイスの後ろからシーラが答えた。

何て頼もしい。

ここに初めて来たときは、この玄関先で裸足のまま、スリッパすらも履こうとしなかった、ただの猫だった。
あれから一ヶ月も経っていない。

そして、何故かマリアはこれがシーラとの今生の別れになる気がしてならなかった。