シェヘラザード、静かにお休み


マリアがシーラに渡したのは、少年が被るようなキャップだ。流石にそれじゃないだろう、とルイスが口を開こうとしたが、

「ちょうど良いわ、借ります」

「差し上げても良いんじゃないですか? ね、ルイスさん」

「え、ああ、どうぞ」

ルイスの返事を聞いて、くるりとその場で回って見せる。サルビアブルーのワンピースの裾がひらりと揺れた。

得意げな顔をして微笑むシーラに、二人が見惚れて拍手をした。

「虎に鰭だな」

「褒め言葉じゃないわよそれ」

そんなことは知っているが、本当に虎に鰭だった。

虎に鰭があるなんて、こんなに最強なことはない。