シェヘラザード、静かにお休み


選ばなかった洋服はもったいないが、置いていく外ない。荷物が増えては、動き辛くなるだけだ。

「マリアさん、帽子ありませんか?」

一番ヒールの低い靴をおろして、シーラは尋ねる。

「どんなものですか?」

「こう、つばが広いの」

「ルイスさんが幼い頃に被っていたものならありますよ」

二階へ上がるマリアの足音を聞いて、ルイスは残された箱を見る。特別思うことはないが、そんなに自分の趣味は悪いものだったか、と心の中で自問自答した。

一階へ下る足音が聞こえて、シーラが顔を上げる。その視線とちょうどぶつかり、首を傾げられた。