シェヘラザード、静かにお休み


それぞれの心に神様が宿っているように、持論というものをどうにかは出来ない。

ルイスはもう一度その髪の毛を梳く。

「その感情、ちゃんと表に出してくれ。俺といるときは」

シーラが顔をルイスの方へ向けた。ブラウンの髪の毛が指に絡まる。月明かりの下で、それが美しく反射している。

「初めて俺って言った」

「は?」

「ルイスが自分のこと、俺って言ったの、初めて聞いた」

宝物を見つけた子供のように、シーラは微笑んだ。

「親やマリアさんにはよく怒られた」

「俺って言うと?」

「ああ、一人称は僕か私って昔から口酸っぱくして言われた」