シェヘラザード、静かにお休み


肩を竦めて、ルイスは手を差し伸べた。

「お手柔らかに」

「あら、それはこちらの台詞でしょう?」

手を取って、握手。ぶん、と一度大きく振られた。

「夕飯冷めますよ!」

一階からマリアの声が聞こえた。
長話になってしまった。

「今行きます」

ルイスが部屋を出て行き、それを追う。急に立ち止まって顔だけ振り向いたので、シーラは危うくその広い背中に鼻をぶつけるところだった。

「言うのを、忘れていた」

「雇用条件のこと?」

「違う。……ただいま」

きょとんとした顔を見せて、シーラは零れるように笑う。

「おかえりなさい」