シェヘラザード、静かにお休み


目を丸くして、起き上がる。裾が直って、ひっそり安堵した。

「どうしたの?」

「夕飯」

ああ、とシーラは本に栞を挟む。
すっかり機嫌が直ったらしいその様子に、ルイスは張り合いがなくなった。

「今行くわ」

「マリアと随分打ち解けたな」

「まあね」

本を窓際の棚へと戻す。

「お前、これからどうする」

シーラが立ち上がる前に、ルイスは近くの椅子に腰かけた。それを見て、シーラもベッドから下りることはしなかった。

「人の心を掌握するなんて簡単よ。ルイスのいなかった期間があれば十分」

檻を隔ててはいないが、あのときのよう青い瞳をきゅっと細める。