シェヘラザード、静かにお休み


「行かなくて良いならそうしたいが、行かないと向こうがこっちに来そうな勢いだった」

「それは確かに困るわね。明日にでも出て行くわ」

「お前はここに居てくれ」

ルイスの言葉に、一番驚いたのはマリアだった。ルイスが今まで女性を家に泊めたことはない。

「明日行ってくる」

「運転手を呼びましょうか?」

マリアの提案に否を示す。

「いや、一人で大丈夫だ。どうせ向こうについても挨拶で返してもらえるとは思えない」

肩を竦めて背もたれに背中を預ける。シーラはその様子を見ていた。

「そうと決まれば、今日はこれくらいにして、早くお休みになってくださいね」