「...早川?」








「あっ、何?」








「大丈夫?ぼーっとしてたけど」








「大丈夫大丈夫!」





遠山は同じクラスの男子で、入学式から席が隣だった。






あたし達の所属する部活は写真部。





なんとなくだけど、遠山に誘われたから入った、みたいな感じ。








そんなんで後悔しないのかってよく言われる。









でもあたしは...









陸上以外、別にどうだっていい。










中学からの友達には、怪我してることは言っていない。








柊羽にだけ。









柊羽の前でも強がってしまう自分が嫌になるけど









あたしが持っている負の感情は、絶対に知られたくない。







嫌われたく、ないんだ。











一番辛いのは、写真部の教室から校庭が見えてしまうこと。












見てしまったら、余計走りたくなる。












窓から一番遠い席に座って、レンズ越しに外を見て、自分の目に走者は写さない。










あたしは、逃げたんだ。












「はぁ、かっこ悪...」









時々自分が嫌になる。












走りたくて、走りたくて、






それでも、走る勇気がない自分が。











いつまでもびびってる自分が。












あたしは、嫌いだ。