「あら、目覚めちゃったのね。思ったより意志が強いわね?」


カサンドラが笑みを浮かべる。


カサンドラの爪で傷ついた傷口から見える血が堪らない香りを放っている。


カサンドラの笑っていても心の中は笑っていないような表面上の笑みに、ティナは背筋が凍りつく感覚に襲われた。


「……死ぬのなら……この血はすべてレオン様に捧げます……」


ティナはカサンドラから離れようと車椅子を動かした。


「フフ……レオン様は貴方を愛しているのよ?貴方の血を飲めるわけ無いじゃない。今までだってヴァンパイアなのに貴方の血を飲んだことはあった?その細い首にレオン様は歯をたてたことがあった?フフフ……レオン様は貴方の血を飲むことなんて出来ないわ」


あたしを愛しているから血が飲めない……?


あたしがヴァンパイアを嫌いだから?


そう言われてみればレオンが人の血を飲んでいる所を一度も見ていない。


……あたしはヴァンパイアになったレオンを見たことが無い。


「苦しんで死ぬのは嫌でしょ?痛みが全身を襲って気が狂いそうになりながら死にたくないでしょ?わたくしなら気持ちよく眠るように逝かせてあげるわ。レオン様もきっと貴方が苦しむ姿を見たくないはず。半狂乱になって死ぬ姿を見せるなんてわたくしなら嫌だわ」


カサンドラが口元に微笑みを浮かべた時、ティナの身体は再び痛みに襲われた。


「っう……」