「どけ、お前は邪魔だ」


低く声は男の背筋をぞくっとさせ、声も出せないほど圧倒される。


「ティナを離せ」


レオンの低く唸るような声に、ティナは荷物のように地面に下ろされた。


男は危機を感じながら指笛を吹いた。


するとどこからともなく数え切れないほどの狼が現れて自分たちを囲んだ。


「きゃーっ!」


よだれを口から流し、今にも飛び掛ってきそうな狼にティナは気を失いそうだ。


身動きが出来ないティナには更に恐怖が襲いかかっているのだ。


「ティナ、大丈夫だ。落ち着け」


レオンは静かな声で、少し離れたティナに言う。


暗がりでも昼間のように見えるレオンにはティナの顔が蒼白なのが見て取れる。