ダドリー夫妻の朝と夜

 エミリアは混乱していた。

 アーサーは宣言通り、夫婦の寝室にエミリアを連れてきたのだろうか。エミリアが、まだ一度も足を踏み入れたことのなかった部屋へと。

 アーサーは迷いのない足取りでエミリアを軽々と運び、そのままどこかに腰を下ろしたようだった。


 このまま寝てしまう?

 今、目覚めたことにする?

 それとも、寝たふりをしていたことを正直に告白し、謝罪する?


 エミリアは狸寝入りという、些細ではあるが、れっきとした嘘を夫についた罪の意識に苛まれていた。


 ああ、神様。でも、なんと言えば良いのでしょう。

 朝の失言を後悔して、合わせる顔がなかったと?

 あなたが話しかけてくださるのが嬉しくてと?

 あまつさえアーサー様がわたくしを抱き上げ、夫婦の部屋へと連れて来てくださるだなんて、今を逃したらもう二
度とないかもしれません。少しでもこのぬくもりを離さずにいたかったなどと正直に申し上げて、アーサー様に嫌われることがないでしょうか。