ダドリー夫妻の朝と夜

 その部屋に入ったアーサー・ヴィンセント・ダドリーは、彼の宝物がブランケットの端から零れ出ているのを発見した。

 妻の豊かでつややかなストロベリー・ブロンドを、見間違えるはずがない。

 なんといっても今朝彼は、その宝物に触れることを、ようやく自分に許すことにしたのだから。

 時が満ちたのだ。


「寝ているのか、エミリア」

 ブランケットがピクッと身じろぎした。

 彼の妻はまだ、髪しか彼の目に触れさせてはくれないらしい。

 ああ、それから小さな足もあった。

 柔らかな室内履きにくるまれた白い甲を見た彼は、今夜妻を寝室に招くことに決めた。

「起きているのなら、夫に出迎えのキスを」

 ブランケットはますますきつく巻き込まれる。

 無理もない。彼らが交わしたキスは、神前での誓いのみ。そして、その晩エミリアは極度の緊張と疲労からか、失神するように眠ってしまったのだ。

 もともと体が強いわけでもなかったエミリアは、慣れない暮らしからか体調を崩しがちだったのだが、まさかその心労の一端が己にあったとは、不覚にもアーサーは今朝まで気づかずにいた。


 ──それなら、下手な遠慮などしなければ良かった。