「いってらっしゃいませ、アーサー様」

「ああ、君はゆっくりしているといい」

「ありがとうございます。あの……」

「なんだ。なんでも言いなさい」

「その……お帰りをお待ちしているのを、許していただけると嬉しいのですけれど」

「……ああ」

 完全にベッドから立ち上がっていたアーサーは、再びベッドの端に腰掛けた。

 すっかり乱れた妻のふわふわのストロベリー・ブロンドを撫でつける。

「あの部屋ではいけない。ここで待つように」

「ありがとうございます。アーサー様」

「アーサーと」

「……ありがとう、アーサー」

「それでいい」

 エミリアが微笑むと、アーサーの頬も確かに緩んだ。

「エミリア。君を愛していると、今日はもう言ったかな」

「いいえ。生まれて初めてお聞きしましたわ、旦那様」

 二人は飽きもせずに唇を重ね、痺れを切らした家令がドアを蹴破りそうになって、ようやく離れたのだった。





─ おしまい ─