ダドリー夫妻の朝と夜

「第一、君の肌を目にしたら、会話にならない」

「……ええと、それはどういうことですの？」

　キョトンと首を傾げたエミリアに、それまでじっと妻を見つめていたアーサーは、スッと睫毛を伏せた。

　ストロベリー・ブロンドで半ば隠れたエミリアの額に、アーサーの唇がごくわずかに触れた。

「こういうことだ」

「あ……え、と……」

　うろたえるエミリアに構わず、アーサーは触れるか触れないかのささやかなキスを妻のこめかみや頬に贈る。

「わたしが妻を愛していないなどと、どうして君が決めつける？」

　アーサーは、朝の台詞を繰り返した。

「けれど、そう思わせてしまったのは、わたしの失態だ。わたしたちは、本当の夫婦とは言えなかったかもしれない。互いをわかり合おうとしていなかったからね」

　そこでエミリアは、アーサーの言葉が今朝のエミリアへの返答だと気がついた。