ダドリー夫妻の朝と夜

 キャーキャー飛び跳ねたいのをグッと堪えた分、顔がにやけてしまう。

「起こしてしまって悪かった。わたしたちには、少々会話が必要だと思ってね」

「ええ、わたくしもそう思いますわ」

 開けた視界で辺りを見回すと、ここはやはり夫婦の寝室であるようだった。アーサー越しに、大きなベッドが見える。

 アーサーはエミリアを両腕に抱えたまま、長椅子に腰掛けていた。

「あの……アーサー様、お話しするのでしたら、下ろしていただいた方が良いと思うのですけれど」

「なぜ?」

「なぜって……アーサー様の腕がお疲れになるでしょうし、わたくしも落ち着きませんわ」

「わたしは別段疲れないが」

 アーサーがブランケットごとエミリアを抱え直したため、二人の顔は息がかかりそうなほど近くなった。

 自分の息をアーサーにかけてしまわぬよう、エミリアはうつむく。

「それにわたくし、このままでは手も足も動かせませんの」

「動かせれば、わたしに抱きついてくれるとでも言うのか」

「え?」

「口は動かせる」

「……そうですわね」