今井さんはいたけどアシダさんがいなくて、
少しウキウキしてた日だった。
「ただいま、うかがいまーす!」
オーダーをとりに、
いつものようにせかせか歩いていたとき、
だれかに、横からぐいっと腕を掴まれた。
「心春じゃないか!!!
ひさしぶりたなーーーーー!!
なんでこんなとこでバイトしてるんだ?」
嫌いな、声。
驚いてその人を見た。
なん、で?
なんであんたに会わなきゃいけないの!?
声はけっこう大きくて、
テーブルを見るとビールが置いてあった。
まだ、酒ばっかり飲んでるわけ?
まわりのテーブルのお客さんは、一斉にこっちを見た。
やめて、やめて。
あんたとは、縁切ってるんだから!!!
あたしは必死の思いで
「お客様、ほかのお客様のご迷惑になりますので。」
それだけ言って、
掴まれた腕をほどこうとしたけど、
だめだった。
「なんだなんだぁ?
よそよそしいなあ、ずいぶん。
自分の父親も忘れたのかぁ~??」
やめてやめてやめて!!!
こんな人の娘とか、本当に嫌なの!!!
もう2度と会わないと思ってたのに!!!!
「なあもう1回、一緒に暮らしてくれよ。
ほんとは寂しいんだろぉ~?
えぇ????」
目がすわってて、もう、かなり酔ってて。
けっこう、キケン。
はやく切り抜けなきゃ。
注目浴びてるし、大事になる前に何とかしなくちゃ。
って思うのに、怖くて怖くて足が思うように動かない。
今井さん、助けてください・・・!!!
頭の中でとっさに浮かんだのは、
前に助けてくれたときの今井さんの姿で。
今井さん今井さん今井さん!!!!!



